ゼネコン業界は、社会インフラや大型建築といった、スケールの大きなプロジェクトに携われる業界です。かつては理系出身者向けの仕事と考えられていましたが、近年は未経験者や文系出身者の転職も増加傾向にあり、ねらい目といえます。
この記事では、そんなゼネコンの仕事内容や代表的な企業とともに、転職に役立つ資格ややりがいを紹介します。ゼネコンへの転職に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ゼネコンとは

ゼネコンとは「ゼネラルコントラクター」の略称であり、建設工事の全体を統括する総合建設業者を意味します。設計から施工、工程管理、予算調整、安全対策までを幅広く担い、マンションやビル、大型施設などのプロジェクトを完遂するのが主な仕事です。
現場では多くの協力会社や職人を束ね、数年単位の工期を管理していく役割を担います。そんなゼネコンは、サブコンやデベロッパーと混同されがちです。
ここからは、サブコンとデベロッパーとの違いについて説明します。
サブコンとの違い
サブコンは、ゼネコンから部分的な工事を請け負う専門業者を指し、電気、空調、配管などの各分野で技術を発揮し、現場を支えるのが仕事です。ゼネコンが全体をマネジメントし、サブコンはその一翼を担うという関係性であるため、両者間には信頼関係が欠かせません。現場の成否は、この連携にかかっているといっても過言ではないでしょう。
デベロッパーとの違い
デベロッパーは不動産開発を主軸とする企業のことで、土地の仕入れや企画、販売計画などを行います。建物の「つくり手」であるゼネコンに対し、デベロッパーは「企画・販売側」であり、両者の立場は大きく異なります。
そのため、発注者と受注者という関係になることが多く、両者の調整力によってプロジェクトの進行が左右されるのです。
ゼネコンの主な業務内容

ゼネコンはただ建物をつくる会社ではありません。プロジェクトの企画段階から完成後の管理まで、多岐にわたる業務を組織的に動かしているため、設計、研究、営業、事務など、それぞれの立場で専門性が求められます。
ここではゼネコンにおける代表的な5つの業務について紹介します。
設計
設計部門は、クライアントの要望や建築基準をもとに、建物の図面や仕様をまとめる役割を担っています。同じ設計でも、意匠設計・構造設計・設備設計など多様な種類が存在し、それぞれで技術と創造力の両方が求められます。
最近ではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング:3次元モデルを用いた建築情報の統合管理手法)などのデジタル技術も活用されていて、施工性や維持管理まで考慮した設計が重要視されています。
施工管理
施工管理は、工程、安全、品質、原価の4つを柱に、職人や協力会社をまとめる、ゼネコンの中核的な業務です。天候や資材の納期、人的トラブルなどは付きものですが、その分完成したときには大きな達成感を覚えられます。
そんな施工管理の仕事では、工事の品質や安全を確保しつつ、工程やコストを管理し、プロジェクトを円滑に進めるスキルが求められます。
研究開発
安全性、耐震性や省エネ、環境配慮に関する新技術の開発に取り組む研究開発職は、ゼネコンの競争力を高めるための重要な分野です。高強度コンクリートや再生資材の活用、新しい工法など、現場の課題解決に直結する成果を日々生み出しています。
こうした研究開発は設計・現場との距離感が近く、互いに尊重し合いながらプロジェクトを進めていける仕事です。
営業
営業は、民間企業や官公庁に対して案件の情報収集や提案活動を行い、ゼネコンのプロジェクトの入口をつくる仕事です。単なる売り込みではなく、技術力や過去の実績を活かしながら信頼を積み重ねていく姿勢が求められます。
受注した案件はその後の設計・施工にバトンを渡すことになるため、社内の各部門との連携も欠かせません。
事務
総務・経理・人事・法務など、会社の基盤を支えるのが事務部門です。現場での活動をスムーズに進めるための予算管理や契約手続き、働く人のサポートなど、裏方としての役割を担う機会が少なくありません。
特に最近は、働き方改革やコンプライアンスの重要性が増しており、現場と本社が協力し合う体制づくりが問われています。
日本の主要なゼネコン企業

日本の建設業界は、企業の規模や実績に応じて「スーパーゼネコン」と「準大手ゼネコン」に分類されています。
スーパーゼネコンは、売上や社員数、技術力、海外展開の実績などで国内トップクラスに位置する大手ゼネコンを指します。一方、準大手ゼネコンは、専門性や地域性に強みを持ちつつ中堅から大手規模の企業で、大型プロジェクトにも対応可能です。
ここでは、代表的なスーパーゼネコン5社と準大手ゼネコン2社について、企業ごとの特徴や強みをご紹介します。
鹿島建設
鹿島建設は、1840年創業の老舗スーパーゼネコンで、国内外の多くの大型プロジェクトに携わってきました。超高層ビルやトンネル、ダムなどの土木構造物をはじめとする大規模工事に強みがあり、耐震技術やICTを活用したスマート施工にも積極的に取り組んでいます。
また、先進技術による施工効率化にも定評があります。
大林組
大林組は、土木・建築の両分野で豊富な実績を持つスーパーゼネコンです。東京スカイツリーなどの象徴的な建築物を手がけ、海外でも東南アジアや北米などで事業を展開しています。
環境に配慮した建設やカーボンニュートラルへの対応にも注力しており、持続可能な社会づくりへの貢献を目指しています。
清水建設
清水建設は、技術力と施工品質の高さに定評があるスーパーゼネコンです。BIMの導入や自動化施工の推進など、生産性と安全性を高める取り組みを行っています。
都市再開発や大規模商業施設の建設など、幅広い分野に対応可能で、顧客のニーズに応じた柔軟な提案力が強みです。
竹中工務店
竹中工務店は、スーパーゼネコンの中では珍しい非上場企業であり、建築分野に特化しています。設計から施工までを一貫して担う体制を持ち、デザイン性の高い建築物に強みがあります。
美術館や宗教施設、高級商業施設など、意匠性が重視されるプロジェクトに多く携わっています。
大成建設
大成建設は、都市開発や空港・スタジアムなどの大型施設の建設に多数の実績があるゼネコンです。国内外のプロジェクトに対応しており、高度な施工管理技術や省人化技術の開発にも取り組んでいます。
医療施設や災害復旧など、社会インフラに関わる分野にも注力しています。
長谷工コーポレーション
長谷工コーポレーションは、準大手ゼネコンの中でもマンション建設に特化した企業です。分譲マンションの施工実績は国内トップクラスで、企画から設計、施工、販売、管理までを一貫して行える体制を整えています。
コスト効率と品質の両立に注力しており、安定した供給力を持っています。
安藤ハザマ
安藤ハザマは、安藤建設と間組の合併によって誕生した準大手ゼネコンです。土木分野において特に強みがあり、トンネルやダム、橋梁などのインフラ整備に多くの実績を持っています。
近年では再生可能エネルギー関連や都市土木の分野でも存在感を高めており、技術開発や安全対策への取り組みにも力を入れています。
ゼネコンで働く魅力

ゼネコンでは、大手であればあるほど建築や土木などの大規模なプロジェクトに携わる機会が増えます。その際に必要な業務は多岐にわたり、社会の基盤を支える重要な役割を担っています。
ここでは、そんなゼネコンで働くことで感じられる魅力を、主に3つの観点から紹介します。
スケールの大きな仕事ができる
ゼネコンの大きな魅力のひとつは、規模の大きなプロジェクトに携われる点です。超高層ビルや橋梁、トンネル、空港、スタジアムなど、都市や地域のランドマークとなる建造物の建設に関与する機会が多々あります。
これらのプロジェクトは数年にわたる長期的なものであり、多くの専門職や協力会社と連携しながら進められます。完成した建物は長期間にわたって使用され、社会に大きな影響を与えるため、達成感や充実感を得られる仕事だといえるでしょう。
設計や開発に関わる職種の場合、自分が考えた構造物が実現する様子を間近に見られることに魅力を感じる人も少なくありません。
社会貢献性が高い
ゼネコンの業務は、インフラ整備や公共施設の建設など、人々の生活に直結するものが多く、社会貢献性が高いとされています。例えば、病院や学校、道路、鉄道などの建設は、地域社会の発展や人々の安全・安心な生活を支える基盤となるものです。
自らが関与した建物や施設が、地域の人々に利用され、社会に貢献していることを実感できる点は、大きな魅力といえます。
安定した収入を期待できる
ゼネコンは、公共事業や大手企業からの受注が多く、経営基盤が安定している企業が多い傾向にあります。そのため、給与水準も比較的高く、安定した収入を期待できる職種といえます。
特に大手ゼネコンでは、福利厚生や教育制度が充実しており、長期的なキャリア形成が可能です。また、経験を積み資格を取得することで、さらなる収入アップやポジションの向上も見込めます。
ゼネコンへの転職に役立つ資格

ゼネコンへの就職は、建築や土木に関する専門的な知識・スキルが求められるため、かつては理工系学部出身者が有利とされていました。しかし、近年では、文系学部出身者や異業種からの転職者を積極的に採用する企業も増えており、多様な人材がゼネコン業界で活躍しています。
とはいえ、未経験からの転職を目指すのであれば、業務に関連する資格を取得しておくことで、基礎知識の証明や意欲のアピールにつなげやすくなります。ここでは、ゼネコンへの転職に役立つ主な資格を紹介します。
建築士
建築士は、建物の設計や工事監理を行うために必要な国家資格で、一級・二級・木造の3種類があります。ゼネコンの設計部門や施工現場では、建築士資格が重視される傾向にあり、特に一級建築士は大型建築物の設計や、責任ある立場での業務に関与する際に必要とされます。
受験には一定の実務経験が必要ですが、資格を取得しておくと設計・監理・現場統括の各分野での評価につなげられるでしょう。
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施工管理技士
施工管理技士は、建設工事の現場管理や安全管理、工程調整などを行うために必要な国家資格です。建築施工管理技士や土木施工管理技士など、工種ごとに分かれており、それぞれ1級・2級があります。
ゼネコンでは、現場の責任者として活躍するためにこの資格が重視されており、特に1級を取得していると大規模プロジェクトを担当できる機会が広がります。未経験者も、まずは2級を取得しておけば、転職後もスムーズに業務を理解できるでしょう。
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宅地建物取引士
宅地建物取引士は、不動産の売買や賃貸に関する重要事項説明を行うための国家資格です。ゼネコンにおいては、土地活用や不動産開発、デベロッパーとの調整業務を担う部署などで重宝される傾向にあります。
建設と不動産の橋渡し役として活躍できるほか、営業や企画職としての転職にも有利な資格であり、文系出身者も取り組みやすい資格のひとつです。
CAD利用技術者試験
CAD利用技術者試験は、建築図面や設計図を作成・読解するための知識と操作スキルを証明する民間資格です。1級・準1級・2級から成る3次元CAD利用技術者試験と、1級・2級・基礎から成る2次元CAD利用技術者試験があります。
建築・土木の現場では図面理解が必須となるため、CAD操作ができることは大きな強みとなります。未経験からの転職を目指す方にとっては、実務能力をアピールできる有効な手段です。
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CADのスキルを役立てられる派遣・転職はアットキャドへ

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まとめ
大規模なプロジェクトに携われるゼネコンは、社会貢献性も高く、やりがいを感じながら働ける仕事です。しかし、専門的な設計・施工の知識が求められるため、未経験の状態からのチャレンジに不安を覚える方も珍しくありません。
「それでも、ゼネコンで自分のCADのスキルを活かしたい」「CAD事務やオペレーターとして、大きなプロジェクトに携わってみたい」とお考えの方、ぜひCADビギを受講したり、アットキャドで求人を探してみたりしませんか。やりがいを感じられる企業に出会えるかもしれません。

