3D CADは製品設計やプロジェクトの効率化を支える重要なツールです。本記事では、3D CADの基本操作から最新トレンド、キャリアアップの方法までを解説します。
初心者の方から実務で使用している方まで、「3D CADをもっと活用したい」「最適な3D CADツールを見つけたい」という方はぜひ参考にしてください。
目次
3D CADとは
まずは3D CADの基本機能や必要性、そして活用される具体的な業界と用途について解説します。
3D CADの定義と基本機能
3D CAD(3次元コンピュータ支援設計)は、設計やモデリングを行うためのデジタルツール。主な基本機能は次の通りです。
- スケッチ作成:2D図面をもとに形状の輪郭を描く
- 押し出し・回転:描いたスケッチを基に立体的な形状を作成する
- シミュレーション:製品が現実でどのように動作するか、応力や振動などを仮想空間でテストする
現在では製造業や建築、医療など、多岐にわたる分野で必要不可欠な存在となっています。
3D CADが求められる理由
3D CADが求められる背景には、まず製品設計の高度化があります。
現代の製品設計は、より精密さと複雑さが求められていますが、3D CADを使うことで手作業や2D CADでは再現が難しい細部まで設計が可能になりました。
また、プロトタイプ作成前にデジタル上で動作や設計ミスを確認できるため、試作にかかるコストや時間を大幅に削減できます。
競争が激化する現代では、高品質な製品を迅速に提供することが求められます。3D CADは、他社と差別化するための重要な手段でもあるのです。
3D CADが活用される業界と用途
3D CADはさまざまな業界で効率化、精度向上、コスト削減などに貢献しています。
例えば、自動車や航空機、家電などの製品開発では、試作品作成や部品間の干渉チェック、製造ラインの効率化に。
建築や土木分野では、BIM(Building Information Modeling)やCIM(Civil Information Modeling)技術の一環として活用され、設計精度を向上させるとともに、施工ミス削減に役立っています。
医療分野では、手術シミュレーションや義肢・インプラントの設計に使用することで、患者に合わせたオーダーメイドの治療が可能になります。
その他にも、映像制作、ゲーム開発、教育分野など、クリエイティブ業界や教育機関でも幅広く活用されています。
3D CADのモデリング手法と操作ステップ

3D CADでの設計は、プロセスを正しく踏めば初心者でもスムーズに行えます。以下では、具体的な操作ステップとポイントを解説します。
STEP1. 基本スケッチの作成
モデリングの第一歩は、線分、円、矩形などの基本形状を使い、平面上にスケッチを描くこと。これがモデルの基礎となり、正確な形状を作るために重要な役割を果たします。
多くの3D CADソフトには、スナップ機能やグリッド表示が備わっています。初心者はこれらの補助機能を活用するとよいでしょう。
よくあるミスとして、スケッチの輪郭が閉じていないと、押し出しが正しく行えません。作図時に輪郭が完全に閉じているか確認する習慣をつけましょう。
STEP2. 押し出しや回転による形状の形成
スケッチが完成したら、押し出しや回転の操作を使って立体的な形状を作成します。このステップで、モデル全体の大まかな形状が決まります。
押し出し操作では、平面スケッチを垂直方向に延ばして立体化します(例:円を押し出して円柱を作成、矩形を押し出して立方体を作成)。
回転操作は、スケッチを軸に回転させて形状を作る方法です(例:円を回転させて球体やトーラス形状を作成)。
意図した形状を正確に作成するには、寸法や角度を正確に指定するのがポイントです。
STEP3. 細部調整と仕上げ
基本的な形状が完成したら、細部の調整を行い、完成度を高めます。ここでは、次のような特定の機能を使ってモデルを仕上げます。
- フィレット:角に丸みを付け、滑らかなデザインの実現や安全性向上に。
- スイープ:特定のパスに沿って形状を押し出す。パイプやチューブの設計に活用。
- ブレンド:異なる断面形状を滑らかにつなげる機能。
最後に視点の調整や断面ビューを活用し、形状に問題がないかをチェックし、モデルを完成させます。
操作ステップを効率化するには、ショートカットの活用や、寸法拘束(長さ、角度、直径などの数値を指定)を設定しておくことなども有効です。
3D CADソフトの種類とおすすめ製品

3D CADソフトは、用途やスキルレベルに応じてさまざまな種類があります。以下では、各カテゴリの特徴とおすすめ製品を紹介します。
ローエンドCAD(初心者向け)
ローエンドCADは、手軽に使えるシンプルな機能が特徴です。主に趣味や教育目的で使用され、3D CADの基本操作を学びたい初心者に最適です。
Vectorworks(ベクターワークス)

米国Vectorworks社が提供する2D/3D設計やBIM機能に対応した汎用CADソフト。
建築設計やランドスケープ、インテリアデザインに適しており、多機能性と直感的な操作性が特長です。
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Fusion 360(フュージョンスリーシックスティー)

米国Autodesk社が提供する高機能な3DCADソフト。
クラウドベースのため、チーム内でのデータ共有とコラボレーションがしやすいのが特長です。
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Rhinoceros(ライノセラス)

米国Robert McNeel & Associates社が提供する、NURBSモデリング(3D空間で曲線や曲面を表現)を採用した3DCADソフト。
自由度の高いモデリングが可能で、工業デザインほか幅広い分野で活用されています。
SketchUp(スケッチアップ)

米国Trimble社が提供する3DCADソフト。
モデリングとレンダリングが一体化され、初心者でも直感的に操作できるツールです。インストール版だけでなく、Webブラウザから利用できるのも特長です。
ミッドレンジCAD(中小規模設計向け)
ミッドレンジCADは、コストパフォーマンスと高機能を兼ね備えたソフトウェアで、中小規模の設計に適しています。
CADWe'll Tfas(キャドウィル ティーファス)

株式会社ダイテックが開発した、空調や配管などの設備設計に特化した日本製の3D CADソフト。
直感的な操作で初心者にも扱いやすく、設備設計や施工図の作成に適しています。
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Rebro(レブロ)

株式会社NYKシステムズが開発した、建築設備設計に特化したBIM対応の3D CADソフト。
配管や電気設備、空調の設計に強いのが特長で、複雑な設計プロジェクトでも効率的に作業が可能です。
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Solidworks(ソリッドワークス)

フランスのDassault Systèmes社が開発する、機械設計用の3D CADソフト。
操作が比較的簡単ながらも幅広い設計ニーズに対応しており、解析やシミュレーション機能も充実しています。
ArchiCAD(アーキキャド)

ハンガリーのGRAPHISOFT社が提供する、建築設計に特化したBIMソフト。
リアルタイムの視覚化機能やコラボレーション機能が豊富で、大規模な建築プロジェクトにも対応することができます。
ハイエンドCAD(大規模設計向け)
ハイエンドCADは、大規模で高精度な設計に対応するプロ仕様のソフトです。航空宇宙や精密機器設計など、複雑な設計やシミュレーションが必要な業界で活用されています。
Revit(レヴィット)

米国Autodesk社が開発した、建築設計や土木インフラ、施設管理の効率化に最適な建築設計向けBIMソフト。
プロジェクト全体の可視化ができ、大規模な建築プロジェクトに対応可能です。
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CATIA(キャティア)

フランスのDassault Systèmes社が開発する、航空宇宙、自動車、精密機器などの高度な設計・製造に対応する総合CADソフト。
複雑なアセンブリや高精度なシミュレーションを必要とする分野に強く、多業種のコラボレーションに対応可能です。
Creo Paramatoric(クレオ・パラメトリック)

米国PTC社が開発した、パラメトリック設計に特化した3D CADソフト。
高度なシミュレーション機能を備えており、設計変更への柔軟性が高いのが特長。製造業での部品設計や解析を行う際に適しています。
3D CADソフトの選択は、設計効率や成果物の質に大きく影響します。自分のニーズやスキルレベルに合ったソフトを選んでみてください。
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レベル別 3D CADを学ぶ方法

3D CADのスキル習得には、自分のレベルや目的に合った学習方法を選ぶことが重要です。それぞれの効果的な学習方法を紹介します。
CAD初心者向け学習方法
初心者が3D CADを学び始める際は、無料体験版を利用するのがおすすめです。
初心者向けソフトを使って、スケッチ作成や押し出し、回転といった基本操作を繰り返し練習しましょう。
また、公式チュートリアルやYouTubeを活用するのもおすすめです。
各ソフトウェアの公式サイトでは、無料のチュートリアルが豊富に提供されています。YouTubeにはユーザーが投稿した操作解説動画が多く、視覚的に学べるため理解が深まります。
CAD実務者向けスキルアップ方法
実務者がスキルを磨きたい場合、専門学校やオンライン講座を活用するのもよいでしょう。これらの講座は、基礎から応用までを体系的に学べるカリキュラムが用意されています。
CAD利用技術者試験やBIM/CIM試験などの資格取得も検討してみるのも一手です。資格はスキルの証明になるだけでなく、転職やキャリアアップにも有利に働くことがあります。
しかし、もっとも効果的なスキルアップ方法は現場での経験です。
設計プロジェクトに積極的に参加し、複数のソフトや機能を習得することで、実践力や柔軟な対応力が身に付きます。機会を見つけて積極的に挑戦していきましょう。
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3D CADの活用事例と最新トレンド

3D CADは、AIやクラウド技術などの新しいトレンドによって、可能性がますます広がっています。以下では、業界ごとの具体的な活用事例と、最新技術に関するトピックを解説します。
業界別3D CAD活用事例
製造
製造業では、自動車や航空機などの部品設計に3D CADが活用され、試作品の作成や量産前の検証が効率化されています。
シミュレーションを通じて性能を確認することで、設計の精度向上やコスト削減、製造ラインの効率化にも貢献しています。
建築・土木
建築や土木分野では、BIMやCIMは必須キーワードと言えるでしょう。
これらの急速な普及によって設計から施工までを一元管理することで、進捗状況の可視化やコスト削減につながっています。
医療
医療分野では、手術シミュレーションや医療機器の設計に3D CADが利用されています。
患者個別のニーズに合わせたインプラントや義肢の作成が可能となり、医療の質が向上するとともに、患者の負担軽減にもつながっています。
最新の技術とトレンド
さまざまな業界で活用されているAI技術は、3D CADにも取り入れられ、設計プロセスの自動化を可能にしています。
AIはデータ分析や最適化を通じて効率的な設計を実現し、設計者の負担を軽減します。また、繰り返し作業を自動化することで、作業時間の短縮と生産性の向上を両立させています。
クラウド技術を活用した3D CADソフトウェアは、リモート環境での作業やチームでの共同作業を容易にします。地理的な制約を受けることがなく、プロジェクト全体のスピードと効率が向上します。
また、デジタルツイン技術も製造業、建築、医療など幅広い分野でコスト削減や作業効率向上に貢献しています。
デジタルツイン技術とは、物理空間の製品やシステム、プロセスを仮想空間上に再現する技術のこと。
建築分野での活用例を挙げると、設計段階で作成した3Dモデルを現場の状況と比較することで、設計ミスや施工ミスを早めに発見し、迅速に対応できます。
また、建物のエネルギー消費をモニタリングする、あるいは空調や設備の保守計画を効率的に立てることも可能です。
3D CADを活用したキャリアアップ方法

3D CADスキルがあれば、転職や昇進、さらにはフリーランスとしての独立まで、可能性が広がります。本章では、キャリアを高めるための資格取得や市場で求められるスキル、将来の展望について解説します。
スキル向上と資格取得の重要性
3D CADを活用したキャリアアップを目指すなら、資格取得も選択肢の一つ。
CAD利用技術者試験やBIM/CIM試験は、その分野でのスキルを証明するための代表的な資格です。
特に、建築や土木、製造業界での設計業務では、これらの資格を持つことで即戦力として評価されやすくなります。
資格取得は条件の良い転職や昇進を約束するわけではないものの、自信を高めるきっかけになり、試験対策を通じた学び直しという役割も期待できます。
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転職市場と将来性
3D CAD技術者は、多くの業界で需要が高まっています。特に、設計経験や最新技術の習得が転職市場での高評価につながります。
3Dモデリングやシミュレーションに加え、BIMやデジタルツイン技術への理解があると、選択肢がさらに広がるでしょう。
また、フリーランスや副業としても活躍できるのが3D CAD技術者の強みです。オンラインプラットフォームを通じて仕事を受注し、柔軟な働き方を実現する人も増えています。
資格取得や市場の動向に目を向け、ぜひ自分に合った成長の道を見つけてみてください。
CADオペレーターの派遣・転職はアットキャドへ

アットキャドは、業界トップクラスの求人数を持つ、CADオペレーターやBIMオペレーターに特化した人材派遣・人材紹介サービスです。
20年以上の実績を持ち、スーパーゼネコンや大手設計事務所を含む2,600社以上と取引実績があり、業界トップクラスの求人数を誇ります。自社に設計部を設けているため、実際に図面を描くプロフェッショナルが在籍し、迅速なサポートが可能です。
研修制度も充実しており、初心者から経験者まで幅広く対応。登録から就業後まで徹底したフォローを行いますので安心してお仕事を探すことができます。
さらに、業界トップクラスの求人数があることから、転職のサポートも行っています。未経験からCADオペレーターやBIMオペレーターになりたい場合や、CADオペレーター・BIMオペレーターとしてキャリアアップしたい場合など、さまざまなケースに対応しているので、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
3D CADスキルは、設計業務を効率化するだけでなく、転職や昇進において大きな強みとなります。
また、設計経験や最新技術の習得は市場で高く評価され、フリーランスや副業としての活躍の幅も広がります。3D CADを活用し、自分らしいキャリアの可能性を広げていきましょう。

