異なるCADソフトで図面をやり取りする際に欠かせないのが「データ変換」です。DWG・DXF・PDFといった形式は初心者には複雑に見え、変換を誤れば文字化けやレイアウト崩れにつながります。
本記事では、CAD初心者でも理解しやすいように、代表的なファイル形式の特徴から主要ソフトでの変換手順、トラブル回避の方法、精度を高めるコツ、便利な変換ツールまで解説します。
実務にすぐ役立つ知識を身につけ、安心してデータを扱えるようになりましょう。
目次
CADデータ変換の基本
CADデータを扱ううえで、まず理解すべきなのはファイル形式ごとの特性です。ここでは主要フォーマットと変換の必要性を解説します。
CADデータ形式の代表例
CADデータを正しく活用するには、形式ごとの特徴を理解しておくことが重要です。
AutoCAD標準のDWGは業界で最も普及しており、設計から施工図まで幅広く利用されています。DXFは異なるソフト間でのデータ交換に適しており、外注先や他部門とのやり取りで重宝されます。
PDFは承認や打ち合わせでの共有に便利ですが、編集には不向きなため確認用としての用途が中心です。
国内ではJw_cadのJWWが中小規模の建築事務所や施工現場で根強く使われ、BIM分野ではRevitのRVTが構造・設備を含む情報一元管理に利用されています。さらに、意匠設計では表現力に優れたVectorworksのVWXが活用されています。
データ変換はなぜ必要?
CADデータの変換は、異なる環境で作業する上で欠かせません。例えば、設計部門ではAutoCAD、施工部門ではJw_cadといったように、部署ごとに利用ソフトが異なることがあるからです。
また、発注者から「DWGで納品」「確認用にPDF提出」などと求められることもあります。さらに長期保存のためにDXFやPDFへ変換が必要なケースも少なくありません。
変換を怠れば、閲覧不能や納期遅延につながる可能性もあるので注意が必要です。
DWG・DXF・PDF間の変換方法

CADデータ変換のメインはDWG・DXF・PDFの3形式です。利用頻度が高いため、正しい手順を押さえることが業務効率化につながります。ここでは主要ソフトを用いた具体的な変換方法を整理します。
AutoCADを使った変換手順
AutoCADではDXFやPDFなどに柔軟に変換できます。DXFは「名前を付けて保存」で形式をDXFに指定、PDFは「Plot(印刷)」機能でプリンタに「DWG To PDF.pc3」を選択すれば出力可能です。
また、保存時には「AutoCAD 2013形式」など古いバージョンを選べるため、相手先の環境に合わせた互換性の確保も可能です。
Jw_cadを使った変換手順
Jw_cadではDXFとPDFへの変換が中心です。DXFは「ファイル>名前を付けて保存」で形式をDXFに指定すれば変換できますが、異なる環境では文字化けやレイヤー崩れが起きやすいため必ず確認が必要です。
PDF化は標準機能として備わっていないため、CubePDFなどの仮想プリンタをインストールし、出力プリンタに指定して作成するのが一般的です。
Vectorworksを使った変換手順
Vectorworksでは「ファイル>エクスポート>DXF/DWG」で変換できます。この際「シートレイヤー」か「デザインレイヤー」を正しく選ばないと、図面構成が崩れる原因になります。
PDF出力は「ファイル>プリント」からシート単位で実行可能です。承認用や確認用に頻繁に利用されるため、どのレイヤーを対象に出力するかを意識することが大切です。
Revitを使った変換手順
RevitからDWG形式に変換する場合は「ファイル>エクスポート>CAD形式」を選び、ビュー単位またはシート単位で出力設定を行います。
PDFは「印刷」機能を利用し、出力プリンタにPDFを指定すれば変換可能です。Revitは情報量が多いため、変換前にビューの範囲や尺度を適切に設定しておくと、受け渡し後のレイアウト崩れを防げます。
オンライン・フリーソフトを利用した変換方法
専用ソフトが使えない場合、オンラインサービスやフリーソフトが役立ちます。
例えばAnyConvやZamzarならブラウザ上でDWGやDXFを変換でき、DraftSightはAutoCAD互換性に優れた代替CADとして利用可能です。
ただし、オンラインサービスは変換精度が不安定でセキュリティリスクもあるため、機密データには不向きです。用途を限定し、軽作業や緊急時のみに活用するのが安全といえます。
PDFからCADへの逆変換
実務では「PDFの図面しか手元にない」という状況も珍しくありません。
ベクトル形式のPDFであれば、AutoCADの「PDFIMPORT」機能やScan2CADといった専用ソフトを使ってDWGやDXFに変換できます。
ただし、Adobe Acrobat Pro単体ではCAD形式に直接変換できないため、追加のソフトやプラグインが必要です。
また、スキャン画像のPDFは自動変換するとズレや文字化けが起きやすく、変換後に修正作業が発生します。それでも、一からトレースするより効率的に図面を再利用できるため、現場でもよく使われる方法です。
CADデータ変換時によくあるトラブルと対策

CADデータの変換では、単にファイル形式を切り替えるだけでは済まない問題が発生することがあります。ここでは代表的な事例と、その具体的な対策方法を整理して解説します。
文字化け
CAD変換で最も多いトラブルの一つが文字化けです。主な原因はフォント環境の差異で、相手側のパソコンに同じフォントが入っていないと、文字が「□」や別の記号に置き換わってしまいます。
特に日本語フォントや独自のフォントを使っている場合に起こりやすく、設計意図が正しく伝わらない大きなリスクとなります。
対策としては、誰でも利用できる汎用フォントを選ぶ、再現性の高いTrueTypeフォントを指定する、必要に応じてフォントファイルを一緒に納品するといった方法があります。
線種・線幅のズレ
変換後に線種や線幅が想定と違って表示されることもよくあります。
これはCADソフトごとに線種の定義や線幅の基準が異なるためで、細い線が太く見えたり、点線や破線が別のパターンに変わったりします。こうしたズレは、図面の読み取りミスや誤解につながりかねません。
対策としては、事前に標準的な線種に統一しておくこと、さらにCTBやSTBといった印刷スタイルテーブルを必ず確認することが有効です。
あらかじめ設定を整理しておけば、相手側の環境でも意図通りの線が再現され、図面全体の品質を安定させることができます。
レイアウト崩れ・尺度不一致
変換後の図面でのレイアウト崩れや、尺度が合わなくなることも典型的なトラブルです。
特にCADでは「モデル空間」と「ペーパー空間」の扱いがソフトや環境によって異なるため、文字の位置がずれたり、寸法が実際と合わない表示になったりすることがあります。こうした問題は施工段階で大きな誤解を生む可能性があるため注意が必要です。
対策としては、変換前に尺度や単位を統一しておくこと、印刷設定を細かく確認することが欠かせません。さらに変換後には必ず相手側の環境で表示確認を行うことで、受け渡し後の手戻りを最小限に抑えることができます。
ハッチングの崩れ
変換後にハッチング(図面内で区画や材料を区別するための模様)が欠ける、あるいはまったく違うパターンに変わってしまうことがあります。これはCADソフトごとにハッチングのパターン定義が異なるために起きる現象です。
例えば、AutoCADで設定した模様がJw_cadでは正しく表示されず、空白や別の模様に置き換わることがあります。
対策としては、変換前に標準的で互換性の高いハッチングに置き換えておくことが有効です。これにより、受け渡し後も表現が安定し、施工図や意匠図といった重要な資料の信頼性を確保できます。ハッチングは図面の見やすさに直結するため、事前に対応しましょう。
画像リンク切れ
外部参照画像(写真やロゴ、地図データなど)を含む図面では、変換後に画像が表示されなくなることがあります。
原因の多くは、画像ファイルの参照パスが「絶対パス」で指定されていることにあります。絶対パスは保存先のパソコン環境に依存するため、データを別のフォルダや他のPCに移すとリンクが切れてしまうのです。
これを防ぐには、参照先を「相対パス」で設定しておくか、画像ファイル自体を図面と一緒に同梱して納品するのが効果的です。
CADデータ変換精度を高めるコツ

CADデータの変換は形式を変えるだけでは不十分です。事前の準備やルールを徹底することで、トラブルを防ぎ精度を高められます。ここでは実務で役立つ工夫を紹介します。
レイヤーを整理してから変換する
変換の精度を高めるために欠かせないのが、レイヤーの整理です。図面内に不要な要素や重複線が残っていると、変換後の表示崩れや、動作が重くなる原因となります。特に大規模な図面ではその影響が大きく、後から修正に多くの時間を取られることもあります。
変換前に余分なレイヤーを削除し、必要な情報だけを整理して残しておくことで、ファイルを軽量化し、変換後のデータが崩れにくくなります。レイヤー整理はシンプルですが、最も効果的な精度向上策のひとつです。
互換性の高いフォントや線種を利用する
文字化けや線種のズレを防ぐには、できるだけ多くのソフトで共通して使える設定を選ぶことが大切です。
特にTrueTypeフォントや標準線種は、多くの環境で正しく表示されやすく、変換後も崩れにくい特徴があります。
一方で、独自のフォントや特殊な線種は見た目が魅力的でも、相手の環境で反映されないリスクが高まります。無難で広く使われる要素を選んでおくことで、やり取りがスムーズになり、後工程での修正の手間を減らすことにつながります。
変換前に尺度と単位を統一する
CADデータ変換で起こりやすいのが、単位や尺度の食い違いです。例えば片方がミリ単位、もう片方がインチ単位のまま変換すると、本来1mの壁が「1mm」に縮んでしまうような極端なズレが生じます。
これを避けるには、変換前に必ず単位を揃えること、さらにモデル空間とペーパー空間の尺度を統一することが欠かせません。
ほんの数分の確認で、サイズが合わない図面を直す手間を大幅に減らせるため、確実に押さえておきたいポイントです。
テスト変換で問題点を事前確認する
いきなり大規模なデータを変換するのは、リスクが高いやり方です。もしエラーが出れば修正に時間がかかり、作業全体が遅れてしまうからです。
そこで効果的なのが、本番前に「小さなテスト変換」を行う方法。 試し印刷のように、一部のデータだけ変換して相手の環境で表示を確認します。
これで問題点を早めに発見できれば、本番の変換も安心です。短時間のテストで大きな手戻りを防げるため、ぜひ取り入れたいプロセスです。
チーム全体で変換ルールを共有する
CADの変換作業を各自の判断に任せると、レイヤー名や保存形式が人によってバラバラになり、仕上がりに差が出てしまいます。そこで効果的なのが、チーム全体で共通ルールを作り、統一して運用すること。
例えば「レイヤーの名前はこう付ける」「保存形式はこのバージョンにする」といったルールを決めておけば、誰が作業しても同じ品質を保てます。
さらに本番前にサンプル図面を交換して確認すれば、齟齬が減り効率的。ルールの共有は安定した成果につながる仕組みといえるでしょう。
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おすすめのCADデータ変換ツール5つ
CADデータ変換の精度を高めるには、適切なツール選びも重要です。ここでは業界で広く使われる代表的なツールを5つ取り上げ、それぞれの特徴や利用シーンを解説します。
1.AutoCAD純正ツール
もっとも信頼できるのがAutoCADの純正機能です。DWGやDXFを高精度で変換でき、業界標準として幅広く利用されています。
古いバージョン形式で保存できるため、取引先との互換性も確保しやすい点が強みです。多少のコストはかかるものの、精度と安定性を重視する大規模案件や取引先が多い場合の第一候補といえるでしょう。
2.DraftSight
DraftSightは低コストで導入できるAutoCAD互換CAD。DWGやDXFの入出力に強く、シンプルな操作で使いやすいのが特徴です。
AutoCADほど多機能ではありませんが、小規模事務所やサブ用途に最適で、コストを抑えつつ実務に対応できます。お試しで導入したい場合にも向いています。
3.Adobe Acrobat
PDFを中心に扱う業務ではAdobe Acrobatが強力な味方になります。承認フローや外部とのやり取りに便利で、図面を紙感覚で共有できます。
CADデータに直接変換できるわけではありませんが、PDFをCADワークフローに取り込む際の重要なツールです。特に外部とのやり取りが多い場合に重宝します。
4.オンライン変換サービス
手軽さを重視するなら、AnyConvやZamzarといったオンラインサービスも選択肢になります。ブラウザ上で操作でき、特別なソフトをインストールせずにDWGやDXFを変換可能です。
ただし、変換精度が安定しないことやセキュリティリスクがあるため、機密性の高いデータには不向きです。軽作業や急ぎの変換に活用すれば利便性を最大限に発揮できます。
5.無料CADビューア
Autodesk ViewerやBentley Viewは、変換機能こそないものの閲覧・確認用として非常に便利です。相手の環境にソフトがなくても、ブラウザや専用ビューアで図面を開ける点が強みです。
変換前の表示確認や、納品データを受け取った側でのチェックに役立ちます。直接的な変換ツールではありませんが、ワークフローの効率化に欠かせない補助的存在といえるでしょう。
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まとめ
CADデータ変換は異なるソフト間での図面共有に不可欠ですが、誤ると文字化けやレイアウト崩れの原因になります。精度を高めるにはフォーマットの特性理解、レイヤー整理や単位統一などの工夫が欠かせません。
適切なツールと正しい手順を実践し、効率的かつ安心して図面を共有できる環境を整えましょう。ぜひ、今日から試してみてください。

